願い



 耐え切れなくなって僕は窓を開け、ベランダに出て星を見ていた。身を切る程冷たい風は、当たり前だけど、本当には僕を切り裂いてくれなかった。

 視線を落とすと、其処には彩りを欠いた町があてもなく生の営みを続けていた。

 白いため息をつく。一切の興味を失ってまた星を眺めた。

 と、一つその寿命を全うした星が流れて行った。

 僕は心の中で繰り返した。

「好きな気持ちを忘れさせて下さい。出逢わなかったことにしてください」

 三度繰り返したけど、とっくに流れ星は消えていた。

 後には虚しさだけが残った。

 思い出が消せるわけがない。気持ちがなくなるはずがない。それなの に僕は、そうなることを求めていた。思い出に価値がないはずがない。寧ろ求めてしまうから…消し去りたいと願った。

 きっともう、二度と届くことのない気持ち。

 それを抱き続けることに果たして意味があるのだろうか。

 その疑問も解決できないまま、僕はまた生きていくのだろうか。 

 不意に、部屋の中に聞き慣れた悲しいメロディーが流れた。Skoop On Somebodyの「Still」だった。

 誰からのメールかも解らなかったけれど、きっと僕は何もなかったように装って返事をするのだろう。そして、生きていく。

 ケータイを手に取りメールを確認した。無題のメールの本文には、大丈夫か、と書かれていた。それは友達からのメールだった。

 僕は此処に、生きる意味が見つかったような気がした。

 

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2009年10月28日:デザイン改修
2006年08月05日:デザイン改修