二人の記念日
恋愛小説同盟第二回イベント出展



 午前零時丁度に、彼女からメールが届いた。

 

 ―――今日は何の日か覚えてる?

 ―――…何の日だっけ?

 ―――それ、ホンキで言ってるの?

 ―――さぁ?(笑)

 

 それきり、彼女からのメールが途絶えた。彼女が可愛らしい頬を大きく膨らませて怒っている姿が自然と思い浮かぶ。僕は苦笑する他なかった。

 携帯をテーブルの上に置いて立ち上がると、僕は窓を開けた。夜の闇の彼方から、冷たい風が部屋に流れ込む。

 遠くに光る星をぼんやりと眺めながら、僕は胸の中で呟いた。

 忘れるはずがないよ、って。

 一年前の今日、3月20日。僕らは付き合い出した。

 別に、覚えてると素直に白状しても良かった。わざわざ彼女の機嫌を損ねるようなことをしたのは何となく…、そうしたかったから。

 少しだけ肌寒さを感じた僕は窓を閉めると、その足で机の前までやって来た。一番下の引き出しを開ける。

 当たり前のことだけど、其処には一昨日の休みに買った彼女へのプレゼントが入っていた。

 香水。

 彼女が以前僕に良くねだっていた、あの香水。

 子供みたいに甘えて、それでも僕が買ってあげないと、一日中機嫌悪くて…。手を焼いたっけ?

 ワガママなところが玉に瑕(きず)だけど、そんな短所を含めて彼女のことが好きだ。

 …これって結構凄いことだ。自分で言うのもなんだけど、ここまで人を愛せることって滅多にないと思う。

 良く人って、振られた人を慰める時「女なんて、男なんて星の数程いるじゃないか」って言うけど、そんな星の中から自分にとって、一番眩しく見える星を見つけて、その星を大切に思ったのだからそれ以上の星を探すのって、難しいと思う。

 実際僕は今まで、彼女程眩しい輝きを見せている女性に出逢っていないし、出逢う必要もないと思っている。これからも彼女さえ居れば、満たされる。

 …学校に行ったら、すぐに彼女のところへ行こう。メールですぐに謝るより、その方が良いだろう。それに、今きっと彼女は拗ねている。多分メールしても読んでくれないだろう。

 明日朝一で彼女に逢って、このプレゼントを渡して、一周年を一緒に祝おう。

 これからも僕は、君の一番の理解者で居たい。

 そう伝えて、彼女に鼻先であしらわれて、怒ったふりして…笑いあって。

 結局はいつも通りなんだけど、いつもとはちょっと違う、二人の時間を刻めれば、と思う。

 折角の、二人の一周年記念なのだから…。


 

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