友情



 不意にケータイに、一通のメールが届いた。読んでみるとそれは、高校時代の良き友人からのものだった。

『そっちの暮らしには慣れたかい? 初めての一人暮らしの体験談を期待してるよ』

 早速、返信を打つ。

『せっかちな奴だな(笑) まだ荷物の整理もついてないよ。ただ一つ言えるのは、女の子が皆短いスカート穿いてるってことだね(笑)』

 送信する。

…そう、僕はこの春進学の為関東へ引っ越してきた。一人暮らしも引越しも、東京の人の多さも何もかもが初めての体験で、新しい生活に慣れるにはまだ時間がかかりそうだった。

 正直に言えばすごく不安だし、心細い。電車はやたら本数が多いし、どれに乗れば目的地に着くのかまるで解らない。都会の人はこんなものをちゃんと理解しているのだろうか。にわかには信じがたいことだ。

 また、メールの着信。

『えちーな奴だな、相変わらずみたいだね(笑) そろそろ参ってるんじゃないかと思ってたけど、安心した』

 耳が…いや目が痛い話だ。

『オレ等皆バラバラでさ、進む道も、見てる景色も未来も…全然違うと思うけど、マジ友達だからさ、ずっと。これからもよろしくな』

 彼の顔が思い浮かぶ。胸に感謝の気持ちが溢れていく…。この気持ちを伝えなければならない。しかし、いざ言葉を紡ごうとすると言葉が出てこない。散々迷った挙句、僕は一言だけメールすることにした。

『ありがとう』

 送信する。

 どんな飾った言葉よりもこれだけできっと、彼は僕の気持ちを全て汲み取ってくれるだろう。そういう人だから。

 僕はケータイを充電スタンドに戻した。小さく「よし」と言うと手近にある窓を全開にした。

冷たい空気が入ってくる。田舎の空気には完全に劣っているけど、これはこれで良い風だ。



 同じ空の下にいるけど、遠い所にいる君へ。お互いの目指すものは違うけど、分かち合った時間は確かなものだから、友情を胸に。今までありがとう、そしてこれからもずっと…友達で居ようね。
 


 

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2009年10月28日:デザイン改修
2006年08月05日:デザイン改修