長編恋愛小説>バーチャル・ガール>第03話「デートの日」

デートの日



 潤はその日、学校から少し離れた公園にいた。それはいうのも、何とあの結菜からデートのお誘いがあったからだ。ここが待ち合わせの場所。すぐ近くにある駅からは、電車の走る音が聞こえている。

 丁度その誘いがあったのは、一週間前だった―――。

 

* * *

 

 潤はMMGからの連絡を読み終えると、間違ってブラウザを落としてしまった。

「あっ」

 しかし、気付いたときにはもう遅い。取り敢えず、ブラウザの下に隠れていたメーラーの「送受信」ボタンをクリックし、新着メールがないか調べる。…3通あるようだ。

取り敢えず、テレホタイムだということで、そのまま新しく来たメールを読み始めた。一通は、潤の好きなアーティストのファンのタメのメーリングリストからだった。新しいシングルのポスターが予約できて最高! といった類のものだった。

「あっ、いいなぁ」

 続いて2通目。結菜からのメールだった。それだけでも嬉しかったのだが、サブジェクトを見て更に驚いた。

 サブジェクトには「デートのお誘い」とあったのだ! 潤は、好きな食べ物は後に残すタイプなので、結菜からのメールを読まず、最後の一通を見た。クラスメイトからのメールだった。野郎だったので、速攻で削除した。そして、急いで結菜のメールに戻った。

 ドキドキする胸の鼓動を聴きながら、左クリックした。またHTML形式だ。どうりで3通にしては、サイズが大きいと思った。そしてまた、女の子らしいメールだった。

 潤は頭の中で読み始めた。

(『こんばんわ、潤くん。誰だか分かる? 結菜だよっ。…あの、タイトル見て分かったと思うけど、今度一度、逢ってもらえませんか? 突然こんなこといってごめんね。私の都合良い日があるので、その日は大丈夫? 一週間後なんだけど…。ダメだったら、ほかの日でも大丈夫だと思うから…。ホント、急でごめんね』)

 そこまで一気に読むと、潤はすっ、と立ち上がり、ベッドにダイビングした。続いて、奇声を上げながらごろごろとのた打ち回っている。

「くわぁああぁぁぁ〜〜〜〜…」

 枕に顔を埋めて脚をばたつかせる。よっぽど嬉しかったらしい。

「………」

 と、突然静かになり、何をするかと思えば腕組みし、あぐらをかいてベッドの上に座った。

(デートっちゅーことは、やはり俺がエスコートしなけりゃならんだろ? と、いうことは、まずあの公園で落ち合って…)

 すでにデートの計画を思案していたのだった。

 

* * *

 

 潤は立ち上がって、公園の一角にある時計を見た。時刻は1時22分。結菜の乗る予定だといっていた電車の到着時間、3分前。潤は駅の構内に向かった。

 駅の構内は、人の群れが慌しく通り過ぎていく。その中で二人だけ、時が止まっていた。

「…あの、松島、結菜さんですか?」

「…はい」

 ゲームで想像までした結菜が今、目の前に居る。その事実に喜びを覚えた。…しかし同時に、驚愕も覚える。

 何故なら、結菜が潤のイメージそのものだったからだ。つまり、ゲームで作った結菜が、そのまま潤の前に現れたのだ。そう思わせる程、潤のイメージ通りだった。

「どうしたの、潤くん?」

 結菜が顔を覗き込む。潤は真っ赤になって首を横にふった。

「いっ、いや、何でもないよっ。さ、行こうよ」

「うん…」

 結菜の頬は心なしか、赤く染まっていた。

 

「でもね、最初逢ったときはホント驚いちゃったよ」

 ハンバーガー片手に、潤は結菜に心境を伝えていた。

「どうして?」

 結菜は首を傾げた。

「だってさ、結菜ちゃんが俺の想像通りの人だったからさ」

「へぇ…。私が?」

「うん」

「私は想像なんてしてなかったな…」

 オレンジジュースを一口飲むと、結菜は言った。

「気にならなかった?」

「あっ、うんん。そう言う意味じゃないの」

 手を振って答える結菜。

「してなかった、っていうより、出来なかったな」

「?」

「もぉ、いいじゃない。こうして逢って、話してるんだから」

 赤くなって俯く結菜の仕草を見て、潤は微笑んだ。

 

楽しい時間はすぐに過ぎて行くもので、あたりはすっかり暗くなっていた。

「今日はありがとう。楽しかったよ」

「うん、俺も。なんか、早かったね、時間が経つのが」

「うん、ホント…。じゃあ、また逢いましょう」

「ああ、絶対。家についたらメール送ってよ? 俺も送るからさ」

「うん。大丈夫」

「…じゃあ、絶対また、逢おうね」

「うん。じゃあ…」

「うん…」

 二人は微笑み合いながら別れた。

 

 潤は家に着くなり、早速パソコンを起動した。勿論メールを送るためだ。

 インターネットに接続し、メーラーの送受信を実行する。新着17件。一旦オフラインにして、全てに目を通した。

「ん?」

 一通、MMGからの便りがあった。早速開いてみる。

『マイノ ジュン様

いつもご利用、ありがとうございます。本日そちらにお送りした試作機ですが、こちらのミスで性格が「積極的」になっていました。深くお詫びいたします。それ以外の部分は特にミスしていません。ご安心ください。また、試作機『マツシマ ユイナ』は、自分の意志により、そちらに住みたいと言っていますので、試験的にそちらにお送りいたします。では、カスタマイズは常時受け付けていますので、いつでもお申し込みください。では。   MMG』

 潤は首を傾げる。

「試作機って、何だよ…?」

潤は怪訝な顔をする。

「それに、こっちに住むって…」

 様々な疑問は浮かぶ。だが、やはり解決されるものは一つもない。

「どうなるんだよ、この先…」

 潤は頭を抱えてそう呟いた。


 

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2009年10月28日:デザイン改修