長編恋愛小説>鏡の中の恋人>第02話「プロローグ・後編」

プロローグ・後編



 真琴は何時の間にか、寝込んでいた。その間にも、外の雨はひどくなる一方だった。そして、真琴が寝返りを打った、その時、雷が唸り声を上げた。真琴は驚いて、飛び起きた。

「キャッ!!」

 飛び起きたと同時に、もう一つ。まるで、真琴をいじめて楽しんでいるようだった。
「もう、何よぉ〜…」

 さらに、もう一つ。

「ヤダぁ〜…」

 そういって真琴はカーテンをしっかり閉め、外の雷の光が射さないように確認した。次に、布団にくるまって音が聞こえないようにした。そして、目をしっかり閉じ、また夢の世界へと旅立っていった。

 真琴が寝入って少し時間が経った。すると、ドレッサーの鏡が微妙に変化した。一回り大きくなったのだ。しかし、普通なら気付かない程度だろう。次に鏡は、あるものを映し出した。外の雷だ。真琴が完璧に閉めたはずだ。現に、今も閉まっている。しかし鏡は、外の雷を、克明に映し出している。普通こういう光が放たれたら、真琴も起きるはずだ。

 しかし、布団に顔までくるまっていたので、真琴は起きなかった。

 その間にも鏡は絶えず、光を放っていた。そして、そこには人影も映し出していた。


* * *


 そして、次の朝。昨日の夜、あれほど狂っていた空は純粋に澄み渡り、希望の色を輝かせていた。

目覚ましの音が鳴り響き、真琴は起きたようだ。

「ん…、うぅん…」

 真琴は手を伸ばして、目覚ましの忌まわしい発信音の根を断った。そして、辺りが静寂に包まれると、真琴はまた目を閉じた。

 しかし、直後鏡が不気味な光と音を立てた。それはまるで、昨日の雷のような感じだった。

 さすがに、今度は真琴も起きた。そして起きあがるとまた、鏡は光を発した。真琴は驚いた。今のは誰が見ても、鏡が自力で光っていたのだ。真琴は息を呑み、ドレッサーの鏡に近づいた。

 真琴が近づくにつれ、鏡が発する光は強くなっていった。そして、真琴がドレッサーの前に立つと、鏡は一段と強い光を発し、その眩しさに目を閉じた。

「うっ…」

 そして少し経つと、光はおさまり、真琴は恐る恐る目を開けた。そして、目の前には…!

「…何だ、普通だわ…」

 そう、「一目見た」だけでは気付かないくらいの変化だった。しかし、良く見て見ると…。

「…あれ??」

 そう鏡には『真琴に似た、違う人』が映っていたのだ。真琴は目を見開いた。そう、真琴も「それ」に気付き、絶句していたのだ。

「…えっ? あっ…」

 真琴は気を失いそうになった。生命の危険すら感じた。後を振り向いた。しかし、当然のように、そこには誰もいない。真琴はもう一度、鏡を見た。やはり、そこには良く似た他人しかいなかった。

「もう、気が済んだか?」

「えっ?」

「…お前の目の前だよ」

「………っ!!」

 真琴はさらに絶句した。鏡の中の他人はこちらを見て、溜息をつきながら自分に話しかけているのだ。

 真琴はまた意識が飛びそうなのを、ぐっと堪えて聞き返した。

「あ、あの…。あなたは、誰…?」

 鏡の中の人は答えた。

「俺か? 俺は、和輝誠だ」

「えっ?」

 真琴は思わず聞き返した。

「だからぁ、和輝誠っ!!」

 真琴はこの理解不能な状況に、今度こそ気を失った。


* * *


「…ん、うぅん…」

 数分後、真琴は気がついた。いつもと変わらない部屋の様子に、真琴はさっきのは夢だと思い込んだ。

「うん、夢、だよね…。夢…」

 しかし、現実はそう甘くなかった。

「何が夢だ。散々人、待たせといて…」

「えっ?」

 一気に血の気が引いた真琴。まさかと思いながら、ドレッサーの鏡を覗く。やはり誠が居た。真琴は息を呑んで、このショックに耐えた。

「お〜、今度は気、失わなかったなぁ」

 真琴は溜息をついて、

「もう、大分慣れたわ…」

「よし、じゃあ、少し今の状況を整理しようか?」

 真琴はうん、と頷いた。

「まず、何故こうなったか、だけど…」

「…うん」

「俺にはさっぱりわからん」

 真琴は気抜けした。偉そうに状況整理とかいって、この様だ。しかし、誠のそういう行為が真琴の気持ちを和らげて行った。

 ―――それからは、お互い気兼ねナシに話し合えた。

『真琴』と『誠』という奇妙な一致も、偶然としてお互い納得した。

 そして次第に真琴は『唯のルームメイト』として意識していた。しかし、誠は違った。真琴を異性として意識して、微かに恋心を抱いていた。

 2人が話し込んでいるうちに、辺りはすっかり暗くなり、どの家庭でも夕食を取り始めていた。真琴も

「…じゃあ、そろそろごはん食べてくるね。皆が待ってると思うから」

 誠に手を振って部屋から出て行った。誠は少し、複雑な心境だった。
真琴が自分を信頼してくれている。それはあくまで、『良い友達として』だ。そんなんじゃ、イヤだ。誠は思った。

 真琴の瞳を見た時から、一目で惚れてしまった。背中の途中くらいまであるロングの髪。吸い込まれそうな、澄んだ瞳。そして、綺麗な声…。真琴の全てが、誠を参らせていた。

 もっとも、真琴は気付いていないのだが…。

 誠は真琴に対する『愛』という感情が、抑えきれないくらいに膨張していた。


 

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