Christmas Time>1999「雪原の幻に」>第02話「幻想の中で」

幻想の中で



 白い世界にも、やはり夜は来るもので…。

「はぁ、はぁ…」

 肩で息をしなければならないほど、走り回って遊んだ二人。

「さぁ、そろそろ帰るか」

 聖の声に頷く聖歌。

「そうね…。ねぇ、どっちだったっけ?」

 その質問にピンと来て、辺りを見渡す。最初はこの右側。向こうには普通の町並みが広がっていた。しかし、今はそこも雪化粧。

 辺りをぐるーっと見渡すと。一面の銀世界。何処にも建物の姿が見当たらない。

「えっと…」

「もしかしてぇ…」

「”道に迷ったっ?!”」

 声が重なる二人。辺りに響いて、のちに消える。

「とっ、取り敢えず、ちょっと歩こうか? 寒いし」

 そうだな、と聖は頷いた。二人はあてもなく歩き続ける。

 そして、数時間後―――。

「もぉダメ、ギブアップ!」

 最初に聖歌がギブアップした。そんな聖歌の隣に腰下ろした聖。座った雪の部分がかなり冷たい。

「なあ、座りたい気持ちはわかるが、雪の上に座るのはどうかと思うけど…?」

「だって、疲れたんだもん…」

 そういって、聖をじー、と見る。

「何だよ」

「つかれたー」

「だから?」

「おぶってぇー」

 甘えた声で聖歌が言う。聖が見るからに迷惑そうな表情をする。

「ヤだよ」

 その答えを聞くと、聖歌は急に、うるうるし始める。

「そっかぁー、聖は冷たいんだね。私のことなんて、どうでもいいんだよね…」

 そんな聖歌の様子を見て、急速に後悔がつのる聖。

「わ、わかったよ…。ほら」

 しゃがんで聖歌に背を向ける聖。喜んでそこに乗る聖歌。

「わーい♪」

 飛び乗る聖歌。聖歌を抱えると、降り積もった雪の上を精一杯歩き出す聖。時折触れる、聖歌の胸の感触が気になって、一人で赤くなっていたのは言うまでもない。

 それからどれくらい歩いたのだろうか。

 辺りの景色は変わることはない。確かに移動している。ただ、同じ場所を歩くように…。

「ねぇ、聖。ここ、さっき歩かなかった?」

「だなぁ?」

 二人もそれには気付いているらしく、その場に立ち尽くした。

「どうしようか? このままやみくもに歩き回っても、意味ないと思うけど」

 背中で聖歌がう〜ん、と唸る。聖歌の回答をひたすら待つ聖。

「取り敢えず、もう下ろしてくれていいよ。聖が疲れちゃうし」

「え…」

 咄嗟のことに、思わずそう呟いてしまった。

「『え…』って、何?」

「あ、いや…。はい」

 口ごもりながら、しぶしぶ聖歌を下ろす聖。

「何か不服そうね」

「別に。それより、どうする?」

(…もうちょっとだけ、聖歌に触れてたかったな…)

 聖の正直な感想だった。

「どうしよう、って言われても…」

 そういって、半ば諦めながら辺りを見渡す。やはり、景色に変化はない…。と、思いきや。

「あれ? ねぇ、あれ何かな?」

 そういった聖歌の指先を見つめ、指し示す方角を見ると―――。

「え…?」

「あれって、もしかして…」

 二人は同時に声を上げた。

「”洞窟”?」


 

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2009年10月28日:デザイン改修
2009年10月28日:加筆修正